介護業界の人材不足対策に。外国人材の受け入れを拡大

更新:2019-06-11

高齢化が進むなか、介護業界では人材不足が深刻な問題となっています。さまざまな人材確保対策が行われるなか、外国人労働者受け入れの動きが進んでいます。

 

介護職員が34万人不足?

ベトナムでの介護技能研修の様子(日和協同組合提供)
団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年度末には、約245万人の介護人材が必要と推測されています。しかし、全国的な人手不足のなか、2025年度末で約34万人が不足する恐れがあります。介護職員の待遇改善や離職防止などさまざまな対策が行われるなかで、外国人材の受け入れ環境の整備も進められています。(厚生労働省「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」参照)
今年4月には、新たな外国人材の受け入れ制度がスタートし、今後、介護業界でも外国人の就労が拡大すると予想されています。そこで、九州・山口で外国人技能実習生共同受入事業を行っている日和(ひより)協同組合代表理事の金澤拓也さん、同組合南部九州エリアマネージャーの東(ひがし)俊孝さんに聞きました。

 

新たな受け入れ制度も誕生

※厚生労働省「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」参照
介護分野での外国人材の受け入れは、EPA(経済連携協定)と外国人技能実習制度に基づき行われてきました。EPAでの受け入れは介護福祉士国家試験の合格が目標です。
「EPAは現地の看護学校や大学を卒業した人が対象で、日本語能力も高いレベルが求められます。数は限られますが、留学生がアルバイトとして介護施設で働く場合もあります」と金澤さん。 技能実習制度は働きながら技術を学ぶ制度で、実習の各段階で学科や実技の試験があり、一定の日本語能力が求められます。この他に介護福祉士の資格を取得した外国人が対象の在留資格「介護」があります。
今年4月からは、新たな在留資格「特定技能」が創設されました。人手不足に対応するため、専門性と技能を持つ即戦力となる外国人を受け入れる制度で、政府は「特定技能」での介護職の受け入れを「5年間で最大6万人」と見込んでいます。
「3年間の技能実習を修了すると、要件を満たせば無試験で『特定技能1号』に変更できるので、私たちはまず技能実習制度で実習生を受け入れ、業務に慣れてから特定技能に切り替えることをおすすめしています」と金澤さんは話します。

 
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(注1)2017年度より、養成施設卒業者も国家試験合格が必要となった。ただし、2021年度までの卒業者には卒業後5年間の経過措置が設けられている。
(注2)「新しい経済対策パッケージ」において、「介護分野における技能実習や留学中の資格外活動による3年以上の実務経験に加え、実務者研修を受講し、介護福祉士の国家
試験に合格した外国人に在留資格を認めること」とされており、現在、法務省令の改正に向けて準備中。 ※厚生労働省「外国人介護人材受入れの仕組み」参照

適切な受け入れ体制を

ベトナムで実習生の面接に立ち会った金澤さんは、外国人材は業務の戦力になると実感したといいます。
「最初から高いレベルを求めるには無理がありますが、皆さん勤勉で、日本語も介護の技術も着実に上達していきます」
東さんは「団塊の世代は海外旅行経験のある人も多いので、外国人職員が増えても違和感がなくなっていくのでは」と話します。

受け入れまでには、現地での講習や手続きなどが必要で、事業所も適切な体制を整える責務を負います。
「検討するならば、人手が足りなくなってからでは遅いです。余裕のあるうちに受け入れて、しっかり教育していくことをおすすめします」
給与や待遇は、「同一労働同一賃金」の原則から、日本人と同様です。

多様な人材の調和が必要

生活習慣や宗教・文化の違いについて理解し、日本人職員と外国人職員が尊重しあい、調和して働ける環境をつくることも大切です。
「日本人職員の理解を深めるための研修も必要でしょう。相手の国の文化を知ることも楽しいと思います。また、外国人職員だけでなく、日本人職員も日本の伝統や文化を学ぶべきだと思います。介護は閉ざされた業界だったかもしれませんが、今後は多様な人を受け入れ、世界を広げていく必要があります」と東さん。
「出稼ぎにきていると考えるのは誤りで、やりがいや評価を求めている人も多いです。アジア圏では、まだ介護の仕事が一般的ではないので、現場に入ると心身ともに負担を感じることがあり、フォローも必要です。言葉や文化も違う日本へ働きにくる人たちに対して、感謝し、リスペクトする意識がないと、ハラスメントや失踪につながる恐れがあります」と金澤さんは注意を促します。

「特定技能」は転職も可能。欧米諸国でも外国人材の受け入れを進めており、今後は国内外で人材の奪い合いになる可能性もあります。
東さんは「職員が定着しないならば、その理由を考えないと、外国人材を受け入れても定着しない恐れがあります」と指摘します。
日本人・外国人の区別なく、働きやすい環境を整え、適切に評価し、待遇改善を図ることが、介護人材の確保とより良い介護につながるはずです。

 

※2019年3月末日の情報に基づく。最新の情報は法務省や厚生労働省のウェブサイトで確認してください。

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