少しの工夫でエネルギーアップ。低栄養を予防しよう

更新:2018-05-22

syokuji_ojiisan栄養状態が悪くなり、体に悪影響を及ぼす高齢者の「低栄養」が問題になっています。原因や予防法など正しい知識を身につけ、栄養状態を改善しましょう。

低栄養が原因で要介護状態になることも

「低栄養」とは、エネルギー量や必要な栄養素が不足している状態です。体重が減るとともに、筋肉量や筋力が低下し、免疫力や体力も低下していきます。そのため、かぜなど病気にかかりやすくなり、病気やけがの回復にも時間がかかります。

低栄養が原因で、筋力や心身の活力が低下する「フレイル」と呼ばれる状態や、筋力や筋肉量が減少する「サルコペニア」、骨・関節・軟骨などの運動器に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下する「ロコモティブシンドローム」を引き起こす恐れもあります。こうした状態が進むと、日常生活の自立度が低下し、転倒や骨折のリスクが増えます。転倒や骨折をきっかけに要介護状態になることも多く注意が必要です。

低栄養の原因熊本リハビリテーション病院栄養管理科科長で管理栄養士の嶋津さゆりさんに聞きました。「低栄養の原因の一つは、エネルギー不足。加齢による食欲低下や消化吸収の問題、活動性の低下で空腹を感じない、歯が悪い、薬の副作用、認知機能障害など、さまざまな理由から食事量が減り、エネルギーが足りなくなるのです」

病気やけががきっかけとなる場合もあります。「手術やけが、感染症などによって体がダメージを受け、栄養不足になることがあります。がんや慢性心不全などの病気が進行し、食欲の減少や体の衰えが生じ、低栄養につながる場合もあります」
一人暮らしで何もしたくない、経済的な問題で十分な食事の用意ができな低栄養の要因い、うつや認知症があるなど、あらゆる要因が複合的に組み合わさっている場合が多いと嶋津さんは指摘します。一人暮らしの高齢者が増えるなか、家にこもりがちで低栄養状態になっても気づいてもらえない人が今後増える恐れもあります。

大幅な体重減少に注意

低栄養かどうかを見分けるために、月に一度でもよいので体重をチェックすることを嶋津さんは勧めます。ダ
イエットをしているわけでもなく、普段と同じような生活を送っていながら、1カ月で5%以上、6カ月で 10%以上の体重減少率があるときは、低栄養を疑います。体重50キロの人ならば1カ月で2.5キロ、6カ月で5キロ減り、45キロになるという状態です。
しかし病気によるむくみで太って見える場合もあるので、注意が必要です。病気で食べられないのか、老化に
よるものかなど、医療機関とも協力し、見極めます。

 

熊本リハビリテーション病院 栄養管理科科長 管理栄養士 嶋津 さゆりさん

熊本リハビリテーション病院
栄養管理科科長
管理栄養士
嶋津 さゆりさん

栄養状態の改善のために

普段からバランスよく食べることが大切ですが、低栄養になったときには、まずは食べたいものを食べて、体
重を減らさないよう心がけます。「何も食べたくないけど、ご飯を少しだけ食べようかと考える高齢の方は多いです。そこで当院では栄養状態のよくない入院患者さんのために、ご飯に中鎖脂肪酸という油の一種を混ぜた『熊リハパワーライス』を考案しました。ご飯を食べるだけで、簡単にカロリーを増やせます」

必要なエネルギー量を確保した上で、たくわえるエネルギーがないと体重は増えないため、高齢者が体重を増
やすのは難しいと嶋津さんは指摘します。「カップスープの素をお湯の代わりに牛乳で溶くだけでも、カロリー
が増えタンパク質やカルシウムもとれます。オリーブオイルを垂らすとさらにカロリーアップ。みそ汁にごま油を落とすなど、ちょっとした工夫でエネルギー量を増やせます」
低栄養で体力が低下し、運動量が減ると、食欲もわかず食べる量が減り、低栄養が進むという悪循環に陥りま
す。食事をとれるようになってきたら、体を動かすことも意識し、筋肉を維持することが大切です。

少しの工夫で食べやすく

高カロリーなもの、栄養成分を補充したものなど、栄養補給に役立つ食品の例

高カロリーなもの、栄養成分を補充したものなど、栄養補給に役立つ食品の例

飲み込みに問題がある嚥下(えんげ)障害、口腔の問題など、その人の状態によって適切な食事も変わります。
食べたものが肺に入って炎症を起こす「誤嚥(ごえん)性肺炎」にならないよう注意も必要です。
「嚥下障害がある場合、実は水も危なくて、飲み込むタイミングと液体が流れるタイミングが合わないと、気管
に入る恐れがあります。少しとろみをつけ、食物を飲みこみやすくするとよいですね」と嶋津さん。
口からしっかり食べる人は、リハビリの効果も高くなる傾向があります。「食べやすい大きさに切る、圧力鍋を
使う、煮る時間を長くして軟らかく調理する、など少しの手間で同じ料理でも食べやすくなります」
少量でカロリーを効率よくとれるもの、バランスよく栄養素を含むものなど、便利な市販品もあります。

「ユニバーサルデザインフードやスマイルケア食などがありますが、噛む力や飲み込む力によってどれを選べ
ばよいか分かりにくいときは、メーカーに問い合わせるか、栄養士などに相談してください」
体質やアレルギー、病気治療や持病の薬などによって、避けた方がよい食品もあるので、必要に応じてかかりつけ医や薬剤師に相談するとよいでしょう。
「食事をとれないので利用する、食事と一緒にとる、体を動かした時の間食にするなど、目的を明確にして、1
週間、1カ月など期間を決めて試してみてください。なかなか栄養状態が改善しないときには、入院や訪問看護などを利用したほうがよい場合もあります。医療機関と上手に付き合うことも大事です」
食事の工夫や運動を取り入れて栄養状態を改善し、元気な暮らしを続けることを目指しましょう。

市販食品例

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