日本人に多い病気「脳卒中」。症状や回復の状態に合わせ 継続的なリハビリを
脳卒中は日本人に多い病気の一つで、年々、患者数が増えています。後遺症が残ることも多く、症状に合わせた継続的なリハビリが必要です。
脳の血管の障害で発症
要介護の原因にも
脳の血管が破れたり詰まったりして起こる病気を「脳卒中」といいます。脳卒中には、脳の血管が詰まって起きる「脳梗塞(こうそく)」、脳の血管が破れる「脳出血」、脳の動脈瘤(りゅう)が破裂して出血する「くも膜下出血」があります。脳卒中の約7割と最も多いのが脳梗塞です。
『脳梗塞リハスタジオNext(ネクスト)熊本』の理学療法士・池田竜太さん、作業療法士・園田大輔さんに聞きました。
「脳卒中の患者数は年々増えており、2025年ごろには約300万人に上るだろうといわれています」と園田さん。後遺症が残る場合も多く、介護が必要となった主な原因の約16・6%が脳卒中です(平成28年国民生活基礎調査の概況/厚生労働省)。
高血圧や糖尿病、脂質異常症の人は、脳卒中の発症リスクが高まります。不整脈などの心疾患によって血栓でき、心臓から脳に飛んで血管を詰まらせる場合もあります。肥満や運動不足、喫煙、多量の飲酒やストレスなども、脳卒中の危険を高めます。
脳卒中が疑われる場合は一刻も早く病院へ
脳卒中になると、障害を受ける脳の場所によって、激しい頭痛や意識の異常、手足や顔のまひやしびれ、言語や目の異常など、さまざまな症状が現れます。
「ろれつが回らなくなる、頭痛がするなど、突然症状が現れることが多いです。脳卒中の治療は一分一秒を争います。診察を待っている間に症状が悪化することもあるので、脳卒中が疑われる場合は、すぐに救急車を呼んでください」と園田さん。早く治療すると回復も早くなります。
脳梗塞と同じような症状が起きる「一過性脳虚血発作」は、短時間でおさまるものの、あとから大きな発作が起きることが多く、脳梗塞の前触れとして注意が必要だといわれています。症状が消えても、病院で適切な処置を受けましょう。
早期にリハビリを開始
治療後、血圧などが安定し、医師が許可すれば、リハビリテーション(リハビリ)を開始します。
「体を動かさないと関節が固まりむくみが出るため、早ければ翌日からリハビリを行います」と園田さん。手足の曲げ伸ばしやストレッチ、症状が安定すれば座る練習も始めます。
医学的な処置が必要なくなれば回復期病院などへ転院し、積極的なリハビリを行います。理学療法士が立つ・歩くなどの動きや装具を使った歩行を担当し、作業療法士はトイレや洗面、食事などのリハビリを行います。言葉が出にくいときや飲みこみの問題は言語聴覚士が担当します。
リハビリでは、まひのある手足の機能を上げるとともに、まひのない手足を上手に使い、残った機能を活かして日常生活を改善していきます。
自費リハビリという選択肢
脳卒中は再発することが多い病気です。原因となる高血圧や糖尿病、脂質異常症などの治療を行うとともに、適度な運動も大切です。
「病気に関わらず、年齢とともに体力や運動機能は低下していきます。体を動かさなければ全身の状態が悪くなります。趣味などで外出の機会を持つのもよいですね」と池田さん。
塩分や脂肪を減らす、禁煙するなど、食事や生活習慣も見直しましょう。医療保険の制度で、リハビリの期間は脳血管障害で最大180日(高次脳機能障害を伴う場合)までと定められています。
退院後は主に介護保険を利用してリハビリを行いますが、利用できる回数や時間は制限があります。そこで注目されているのが保険外のリハビリ施設(自費リハビリ)です。
『Next熊本』では理学療法士と作業療法士が90分間、個別に対応します。「酸素ボックス内でのリハビリ」を行うことも特徴の一つです。各施設によってさまざまな特徴があるので、自分に合うところを選びましょう。
「脳卒中の症状は一人ひとり違い、その人に合わせたリハビリを行うことが改善につながります。根気よく行うことで、できなかったことができるようになります。あきらめずに続けることが大切です」と池田さん。
園田さんは「リハビリが目的になってはいけない」と指摘します。「なりたい自分、やりたいことなど、目標に向けて、リハビリの先の幸せのために、がんばってほしいです」
自己流の運動や無理なリハビリで、体を痛めてしまうこともあります。専門家の指導のもと、自分に合ったリハビリを続けることが大切です。
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